合掌筋力調律法

011技とはつまり理にかなった動きでなければならない。

稽古をして調う武術、身体でなくてはならない。

われわれの身体は常に不安定の中に在り、その中で安定する動きを探しバランスを保っている。その安定する動きは必ずしも万人が同じではなく、それぞれの身体の癖や思い方で変化をしている。

稽古は長く、その成長はすぐには分からない。技とはそういう長い道のりを経て備わるもの。しかし体の変化とはすぐに出るものでも在る。

正しい動作とは、その数秒後には調う力を持っている。身体とはそういう瞬間的に変化する力を有している。

例えば剣を数本振った後、身体のバランスをみると調っていたりする。または崩れることもある。崩れる場合はその振りが間違っているのだ。

ある構えを取る、構えが正しければ身体の芯に力が入る。

ちょっとした動きだけで身体は調いもするし崩れもする。長い年月だけが必要なのではない。量より質とはすべてではないが、少なくとも身体に於いては質を選択する。

ではどうしたら身体の芯に力を容れることができるのか。

そこで研究稽古しながら編み出したのが合掌筋力調律法。

方法は文章では難しいがかいつまんで記す。

二人一組になり相手にふつうに合掌をしてもらう、そしてその合掌が離れないようにもう一人がその合掌を引き離すように引く。その時に合掌するほうは別になにも頑張らなくてよい。ただ普通に合掌すればよい。術者は引くほうなのだ。

どう引くかによる。うまく引ければ相手の合掌に筋力が入り、合掌は離れなくなる。その力は丹田に落ち、足裏指まで繋がる。

これをやってから剣を持つとしっかりと腰が安定し意識も明確になる。

潜在意識と顕在意識のバランスが調律される。

この方法は初心者には難しいがコツをつかんでくると、その力の方向性がわかってきたり相手の身体内部の弱い個所が伝わってくる。そうしたらその弱い個所に芯を容れる。

合掌筋力調律法は一つの型である。身体の調いをしっかりと意識し真剣に稽古することが重要である。剣術を身体の調いとして稽古されるのも良い。若い方だけではなく、動きに自信のない方でも稽古できる。剣を持つだけでもバランスは変わり、身体に芯が生まれてくる。武術という捉え方でなくてもよい。身体動作として稽古していただくだけで身体は前に進み足元を照らす。