054人は二人以上で関わり生きている。その人間関係を円滑にするには相手に対して敬意を表すこと。自分の思いが強すぎると相手との関わりも鈍くなる。

親しき仲にも礼儀あり。礼あるところに秩序が生まれ、相手を尊重し人と人が生きる場がそこに生まれる。武道で礼を重んじられているのは広く知られるところ。闘いの中にも相手を尊重する心がある。関わりの生まれるところすべてに礼が在る。関わりの中から礼を取ってしまったら関わりは崩壊し、生きる、という人の在り方に学びを持たなくなりただ争いに打ち勝つだけの、存在としての人の在り方になってしまう。

人は礼をすることで心を相手に届け、交わすことで互いの意識は透明で意味あるものとなる。目上の人に対してだけのことではなく、たとえそれが自分の子供に対してでも礼は必要である。神仏に対しても礼をし、人すべてに対して礼は大切なこと。人だけではなく場に対しても礼はなされる。また礼は自分の欲を打ち消すためにも働く。礼は形だけではなく、心から動作されるもので、その動きは心そのものとならなければならない。

礼の所作はただ頭を下げるのではない。正確に、丁寧に、慎重に動作されるもので、そういう稽古をしてようやく身に着くものである。

毎回の稽古で礼の時に緊張感を持つことで、その内面は磨かれ、姿は美しく整えられる。

その心持は刀を抜くときと同じ心境で動作されなければならない。

礼法は身心の基本であり即奥義でもある。